※本記事は一般向けの情報です。症状が続く場合は早めに医療機関を受診してください。
関節リウマチ(RA)は 免疫の異常 により主に手足の関節が腫れて痛む病気です。
発症から 3~6 か月以内 に適切な治療を始めると、将来の関節破壊を大幅に抑えられると分かっています。
そこで重要になるのが “早期かつ正確な診断” です。
受診の目安
- 朝こわばり が 30 分以上続く
- 手首や指の小さな関節 が左右対称に腫れて痛む
- 微熱・全身のだるさが 1 か月以上続く
上記のうち 2 つ以上 当てはまる場合は、早めに専門医(整形外科/リウマチ科)に相談しましょう。
診断の流れ
問診・視診・触診
チェック項目 | 目的 |
---|---|
痛む部位と期間 | 慢性化の度合いを推定 |
朝こわばりの有無 | RA の典型症状 |
家族歴・既往症 | 遺伝/他疾患との関連 |
血液検査
- RF(リウマトイド因子)
- 抗 CCP 抗体 ← 早期 RA で特異度が高い
- CRP・ESR(炎症の程度)
- MMP-3(関節破壊マーカー)
ポイント:RF が陰性でも抗 CCP 抗体陽性なら RA の可能性があります。
画像検査
検査 | 目的 |
---|---|
X 線 | 関節破壊・骨びらんの有無 |
超音波 | 滑膜炎や早期びらんをリアルタイム確認 |
MRI | 造影で滑膜炎・骨髄浮腫を詳細評価 |
ACR/EULAR 分類基準(2010)
項目 | 点数 |
---|---|
関節数(1 大+2〜10 小関節など) | 0〜5 点 |
血清学(RF / 抗 CCP) | 0〜3 点 |
炎症反応(CRP / ESR) | 0〜1 点 |
症状の持続 >6 週間 | 1 点 |
合計 6 点以上 で RA と分類。臨床判断とあわせて確定診断します。
鑑別診断
関節リウマチに似た症状を示す疾患は、下記の通り多岐に渡ります。
これらの疾患の除外が、関節リウマチと診断する上で重要となります。
鑑別難易度 | 疾患名 |
---|---|
高 | ウイルス感染に伴う関節炎(パルボウイルス、風疹ウイルスなど)、全身性結合組織病(シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、皮膚筋炎、多発性筋炎、強皮症)、リウマチ性多発筋痛症、乾癬性関節炎 |
中 | 変形性関節症、関節周囲疾患(腱鞘炎、腱付着部炎、肩関節周囲炎、滑液包炎など)、結晶誘発性関節炎(痛風、偽痛風など)、血清反応陰性脊椎関節炎(反応性関節炎、掌蹠膿疱症性骨関節炎、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患関連関節炎)、ベーチェット病、血管炎症候群、成人スチル病、結節性紅斑、その他のリウマチ性疾患(回帰性リウマチ、サルコイドーシス、RS3PEなど)、その他(更年期障害、繊維筋痛症) |
低 | 感染に伴う関節炎(細菌性関節炎、結核性関節炎など)、リウマチ熱、再発性多発軟骨炎、悪性腫瘍(腫瘍随伴症候群)、アミロイドーシス、感染性心内膜炎、複合性局所疼痛症候群など |
難易度の目安
高 = 頻度もスコア偽陽性率も比較的高い
中 = 頻度は中等~高だが偽陽性率は低い
低 = どちらも低い
(日本リウマチ学会新基準検証委員会報告書)
早期診断がもたらすメリット
- 骨びらん進行を抑制
- 生物学的製剤の効果が高い
- 日常生活(ADL)の維持
- 医療費・通院回数の長期的削減
よくある質問(FAQ)
Q.関節リウマチ患者で関節破壊を防ぐ方法は?
ー発症から 3~6 か月以内 に適切な治療を始めると、将来の関節破壊を大幅に抑えられると分かっています。そこで重要になるのが “早期かつ正確な診断” です。
Q.血液検査だけで確定できますか?
ーいいえ。抗体が陰性の「血清陰性 RA」もあり、症状・画像・経過 の総合判断が必要です。
Q.どの科に行けばいい?
ー整形外科 または リウマチ科 で診断・治療を行います。当院では初診当日に血液検査・エコー検査が可能です。
まとめ
- 関節リウマチは 早期発見・早期治療 が鍵
- 問診+血液+画像+分類基準 で診断
- 抗 CCP 抗体は早期診断の重要マーカー
- 気になる症状があれば 6 週間以内の受診 が理想
参考文献
- Aletaha D, et al. Ann Rheum Dis. 2010;69(9):1580-1588.
- 日本リウマチ学会. 『関節リウマチ診療ガイドライン 2024』.
- Smolen JS, et al. Lancet. 2023;401(10371):150-162.
整形外科専門医・医学博士 佐々木颯太