この記事でわかること

  • 外反母趾(バニオン)のしくみと症状
  • 保存療法・手術療法それぞれの選択ポイント
  • 今日からできる履き物選びとセルフケア

 

外反母趾とは?

外反母趾は、足の親指(母趾)が外側へ曲がり、第1中足骨が内側へ張り出すことで V字型に変形 する病気です。統合解析では成人女性の約 24%、男性の 11%が罹患すると報告されており、中高年ほど頻度が上がります。変形部位の骨の出っ張りを バニオン(bunion) と呼び、靴に当たると赤く腫れて痛みやすくなります。


 

主な原因と危険因子

原因・因子解説
遺伝的素因扁平足や第一中足骨が長い足型はリスクが高い
靴の圧迫つま先が細いハイヒールは荷重と圧迫を増やす
加齢・女性ホルモン靭帯がゆるみ、変形が進みやすくなる
関節リウマチ/痛風炎症により関節包が拡張し変形が助長される
足部外傷中足骨頭部の軟骨損傷から二次的に発症することも

 

よくみられる症状

  • 親指の付け根が靴に当たって擦れる痛み
  • バニオン部の発赤・腫脹・熱感
  • 長時間の歩行後に出る足の疲労感
  • 重症例では第2趾のハンマートウ、足裏の胼胝(タコ)

 

診断の流れ

  1. 視診・触診
    親指の曲がり角度(外反母趾角)やバニオンの腫れを確認します。
  2. レントゲン撮影
    外反母趾角(≧15°)、第1–2中足骨間角(≧9°)などを計測します。
  3. 重症度判定
    軽度・中等度・重度で治療方針が変わります。
    例:外反母趾角 20〜40°は中等度、40°超を重度と分類。

 

保存療法(まずはここから)

方法ポイント
靴の変更つま先幅が広く、ヒールが 3 cm 未満の靴へ。靴内の摩擦と圧迫を減らします。
足底板・トーセパレーター中足骨頭の荷重分散と母趾外転筋のストレッチ効果があります。症状緩和や進行抑制を期待して用いられることがあります。
理学療法タオルギャザー・足趾グーパー運動で筋力低下を防ぎます。
薬物療法バニオンの痛みが強いときは NSAIDs や冷却で疼痛・炎症をコントロールします。

保存療法で痛みの軽減や進行抑制が期待できるものの、変形そのものは完全には戻らない点に注意しましょう。


 

手術療法(生活に支障が大きいとき)

  • 遠位骨切り術(シェブロン法など)
    軽度〜中等度の変形に用い、骨を V 字型に切って内側へ移動させます。
  • 近位骨切り術/apidus(ラピダス)法
    中〜重度変形や第1中足骨の内反が強い症例に選択します。
  • MTP 関節固定術
    重度変形で関節変性が進んだ症例に適用。痛みの再発率は低いですが可動域が制限されます。

主要な足の外科関連学会のガイドラインでは足の形状・変形角度・ライフスタイルを総合的に評価して術式を選択するよう推奨されています。


 

日常でできる予防・セルフケア

  1. ヒールの高さは 3 cm 以下、つま先が丸い靴を選ぶ
  2. 1 日 2〜3 回、タオルギャザー運動を 20 回ずつ
  3. 入浴時に母趾を外側にゆっくりストレッチ(10 秒 × 5 回)
  4. 痛む日は 15 分間のアイシングで腫れを抑える
  5. 体重管理 — 肥満は足部荷重を増やし進行を早めます。

 

よくある質問(FAQ)

Q.ドラッグストアなどで売っている外反母趾用のサポーターやグッズは、効果がありますか?

ー市販品は一時的な痛み緩和に役立つ場合がありますが、変形自体を治すものではありません。根本的な改善には、専門医のアドバイスとご自身に合った靴選びが不可欠です。

Q.親が外反母趾なので、自分も遺伝でなってしまうのではないかと心配です。若い世代でもできる予防法はありますか?

ー遺伝的素因も影響しますが、適切な靴選びや足指の運動を心がけることで発症リスクは軽減できます。若い頃からの正しいフットケアが大切な予防策となります。

Q.外反母趾の手術をしたら、どれくらいで普通の生活に戻れますか?また、手術後に再発する可能性はありますか?

ー回復期間は術式や個人差により異なり、普通の靴が履けるまで数ヶ月が目安です。再発リスクはゼロではありませんが、適切な術式と術後のケアで最小限に抑えられます。

 

まとめ

  • 外反母趾は 靴の工夫と保存療法 で痛みを抑え、進行を遅らせることが可能です。
  • バニオンの赤みや腫れは圧迫のサイン。幅広い靴に替え、装具を併用しましょう。
  • 日常生活に支障が出る場合は手術を検討しますが、術式は変形の程度や生活スタイルで選択が変わります。
  • 疑問や痛みが続くときは整形外科専門医へ早めに相談してください。

 

参考文献

  1. StatPearls Publishing: Hallux Valgus. Updated 2024. (国立バイオテクノロジー情報センター)
  2. Yammine K. Global prevalence and incidence of hallux valgus: a systematic review and meta-analysis. J Foot Ankle Res. 2023. (BioMed Central)
  3. Sussex MSK Partnership. Bunions (Hallux Valgus) Patient Leaflet 2024. (サセックスMSKパートナーシップ )
  4. Concord Orthopaedics. Bunions – Patient Education. 2023. (Concord Orthopaedics)

 


整形外科専門医・医学博士 佐々木颯太

    投稿者 ssksut92

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