この記事でわかること
- なぜ軽い運動で痛みがラクになるのか
- 自宅で始めやすい有酸素運動3つと実践手順
- 腫れや痛みが強い日の対処法
- 信頼できる医学論文(参考文献)一覧
有酸素運動が関節にやさしい4つの科学的メカニズム
1. 体重を減らして「荷重」を下げる
1 kgやせると、歩行時に膝へかかる負担が約3〜4 kg減ります。体重5 %減で膝痛と階段昇降が有意に改善したという臨床報告もあります。
2. 筋肉ポンプで血流アップ
リズミカルな動きで筋肉がポンプの役目を果たし、関節周囲のむくみが解消。温まった関節は動きもスムーズです。
3. 関節内の「潤滑油」を循環
関節を動かすと滑液がよく回り、軟骨に酸素と栄養が届きやすくなります。結果として“きしみ感”が減少します。
4. 体内で“痛み止めホルモン”が分泌
やや息が弾む運動を20分続けるとエンドルフィンなどが増え、痛みの感じ方(痛覚閾値)が上がります。同時に軽い抗炎症作用も得られます。
始めやすい有酸素運動3選
ウォーキング
- 平坦路・クッション性の高いシューズ
- “隣の人と会話できる速さ”が目安
エアロバイク(固定式自転車)
- 体重の垂直荷重がほぼゼロ
- ハンドルに前腕を乗せ、軽い前かがみで膝を守る
水中ウォーキング/アクアサイズ
- 浮力で関節荷重が1/3〜1/4
- 水の抵抗で筋力トレ効果もプラス
失敗しないステップ別プログラム
ステップ | 内容 | 目安 |
---|---|---|
ウォームアップ | 関節を軽く回し、ゆったり動く | 5 分 |
本運動 | やや息が弾む強さで継続 | 15〜20 分 |
クールダウン | ペースを落として深呼吸 | 5 分 |
まずは 週150 分(30 分×5日) を目標に。慣れたら10 %ずつ時間を増やします。
痛み・腫れが強い日の対処法
- 水中運動や上半身バイクに変更
- 温め⇒軽いストレッチで血流を促す
- 翌日に痛みが残る場合は 運動量を30 %カット
よくある質問(FAQ)
Q. 痛みが出たら運動をやめるべき?
- 鋭い痛みや膝が熱を持つような痛みが出たら、いったん中止してアイシング+安静を取り入れます。
- **鈍い違和感や軽い筋肉痛(痛みスケール3/10以下)**なら、強度を30 %ほど下げて継続してかまいません。
- 痛みが24〜48 時間以上続くときは運動を休み、必要なら医師に相談しましょう。
Q. サポーターや杖は使ってもいい?
使ったほうが安全に運動量を確保できます。痛みが落ち着いたら徐々に外しましょう。
Q. どのくらい痩せれば効果が出ますか?
体重の 5 %減(60 kgなら約3 kg)が痛みと機能の改善ラインとされています。
まとめ
- 有酸素運動は 荷重軽減・血流改善・潤滑促進・内因性鎮痛 の4方向から関節痛を和らげます。
- ウォーキング・エアロバイク・水中運動など衝撃が少ない種目で始めましょう。
- 週150 分・痛みスケール3/10以内を守り、少しずつ継続することがコツです。
- 強い腫れや麻痺がある場合は自己判断せず専門医へ相談してください。
参考文献
- Juhl C, et al. Arthritis Rheumatol. 2014; Meta-analysis of aerobic exercise for knee osteoarthritis.
- Ettinger WH, et al. JAMA. 1997; Randomized trial comparing aerobic and resistance exercise in older adults with knee osteoarthritis.
- Mustafa AG, et al. Clin Rehabil. 2023; Systematic review of aerobic training effects on pain and function in osteoarthritis.
整形外科専門医・医学博士 佐々木颯太