この記事のポイント
- 変形性膝関節症のしくみと「なぜ痛むのか」をやさしく解説
- 家でできるストレッチ・筋トレ・有酸素運動を具体的に紹介
- 痛みを減らすカギとなる 内側広筋(ひざ内側の筋肉) の鍛え方を詳しく解説
- 体重管理や歩き方など、日常生活で気をつけるコツもまとめて紹介
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減って クッション機能が弱くなる ことで痛みやこわばりが出る病気です。特に中高年の女性に多く、階段や立ち上がりのときに「ズキッ」「ギシギシ」という痛みが出やすくなります。
リハビリが効く3つの理由
痛みを減らす
軽い運動で血行が良くなり、炎症物質が関節から流れ出て 痛みがやわらぎます。
軟骨を守る
太ももの筋肉が膝を安定させ、軟骨への 過度な圧力を分散します。
体重をコントロール
ウォーキングやエアロバイクで体重が減ると、膝への荷重が 1 kg で約3–4 kg分 少なくなります。
リハビリメニュー
ウォームアップ
- ベッドや椅子に腰掛けて、膝の曲げ伸ばしと足首回しを各30回
- 1分で 滑液(関節の潤滑油)を循環させましょう
ストレッチ
ストレッチ | 方法 | 回数 |
---|---|---|
ハムストリングス | 椅子に片足を乗せ、背すじを伸ばしたまま前屈 | 20秒×左右3回 |
ふくらはぎ | 壁を押しながら片足を後ろへ伸ばす | 20秒×左右3回 |
太もも前(大腿四頭筋) | 立位で足首を持ち、かかとをお尻へ | 15秒×左右3回 |
筋トレ
エクササイズ | 方法 | 目安 |
---|---|---|
セッティング | 座って膝下に丸めたタオルを入れ、膝裏で押しつぶす | 5秒×10回×2 |
レッグレイズ | 仰向けで片脚をまっすぐ上げる | 10回×2 |
ミニスクワット | 椅子に触れる直前で立ち上がる | 8回×2 |
内側広筋(ひざ内側の筋肉)を集中的に鍛える
セッティング+タオル絞り
座位で膝を伸ばし、膝下にタオルを挟んで押しつぶしながら 足先を少し外向きにします。5秒キープ×10回を2セット。
スクイーズスクワット
壁にもたれて膝を20°曲げ、太もも間にボールやクッションを挟みます。押しつぶしながら3秒キープ×8回を2セット。
TKE(ターミナルニーエクステンション)
立位で膝裏にゴムチューブを掛け後方へ引き、膝をゆっくり伸ばし切ります。伸ばし切ったところで 膝のお皿を内側へ軽く寄せるイメージで2秒止める×10回を2セット。
ポイント
- トレーニング中は「ひざの内側が硬くなる感覚」を意識しましょう
- 痛みが出ない範囲で、週3〜4日継続すると効果が出やすいです
有酸素運動
- エアロバイクまたは水中ウォーキングを15〜20分
- 会話ができるペース(目安:息が弾む程度)で週150分を目標に
- 運動後や翌日の痛みが 3/10 を超えた場合は、次回の時間を30%減らします
日常生活でのコツ
サポーター
外出時に膝を安定させ、痛みが落ち着いたら徐々に外しましょう。
歩き方
つま先と膝をまっすぐ前に向け、小刻み歩行で衝撃を抑えます。
体重管理
60 kg の人なら −3 kg(5%減)で膝の負担が15%以上軽くなります。食事と有酸素運動をセットで行うと成功しやすいです。
よくある質問
Q.痛む日は休んだほうがいいですか?
腫れや鋭い痛みがある日はアイシングと安静を優先しましょう。鈍いこわばりなら、痛みが強くならない範囲で ストレッチとゆるいウォーキング を続けたほうが血流が保たれ、回復が早いです。
Q.階段はできるだけ避けるべきでしょうか?
下りが負担大なのでエレベーターを活用しましょう。上りはゆっくり&手すり利用であれば 筋トレ代わり になります。
Q.サプリメントは必要ですか?
グルコサミンなどは効果が限定的です。運動療法と体重管理が最優先で、足りない栄養素(ビタミンD・カルシウム)は食事で補うことが推奨されています。
まとめ
- 痛みを減らすカギは 内側広筋を含む太もも前の筋力アップ と 有酸素運動による体重コントロール です。
- ストレッチ→筋トレ→有酸素運動の順で 週150分 を目安に継続しましょう。
- 日常の歩き方・サポーターの正しい使い方も大切です。
- 強い腫れや夜間痛が長引く場合は整形外科へ早めにご相談ください。
参考文献(PubMed 英語論文)
- Juhl C, et al. Effects of exercise on pain and function in knee osteoarthritis: systematic review and meta‐analysis. Arthritis Rheumatol. 2014.
- Messier SP, et al. Diet and exercise for knee osteoarthritis: randomized controlled trial. Arthritis Rheum. 2013.
整形外科専門医・医学博士 佐々木颯太