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この記事でわかること
- こむら返り(足のつり)が起こるメカニズム
- 夜中・運動中に起きやすい人の特徴と誘因
- すぐに痛みを止める方法と予防ストレッチのやり方
- 日常生活でできる水分・ミネラル管理のポイント
こむら返りとは?
こむら返りはふくらはぎ(腓腹筋)が急激に収縮して戻らなくなる現象です。筋肉の電気信号が暴走するイメージで、典型的には 夜中の就寝中や運動後 に発生します。医学的には「有痛性筋痙攣」「筋クランプ」と呼ばれ、誰にでも起こり得るものですが、頻発する場合は体内バランスの乱れを示すサインでもあります。
こむら返りが起こる主な原因
水分・電解質(ミネラル)の不足
- 発汗や利尿剤の服用で 血中のナトリウム・マグネシウムが低下
- 筋細胞の電気的興奮性が高まり、少しの刺激でつりやすくなります。
過度な筋肉疲労
- 長時間の立ち仕事や激しい運動で筋肉に乳酸がたまると、
カルシウムが筋細胞から抜けにくくなり“収縮しっぱなし” の状態へ。
血行の停滞・冷え
- 就寝中は体温が下がり、ふくらはぎの血流が滞りがち。
- 寒い場所でのスポーツや薄着睡眠も発生リスクを上げます。
神経やホルモンの影響
- 妊娠後期や甲状腺機能低下症、腰部脊柱管狭窄症では 末梢神経への刺激閾値が低下 し、痙攣が起こりやすくなります。
こむら返りが起きたときの対処法
1)即時ストレッチ
- つま先をつかんで 自分の方へ引き寄せる
- ふくらはぎが伸びる角度で15秒キープ × 2~3回
2)軽いマッサージ
- 痛みが落ち着いたら足首から膝方向へやさしくさすります。
- 血行を促進し、再度の収縮を予防します。
3)温罨法(おんあんぽう)
- ホットタオルを2~3分当てて筋肉を温めると痛みが引きやすいです。
ポイント
強く揉むと筋線維を痛めることがあるため、伸ばす→温める→軽くさする の順が安全です。
知っておきたい治療薬
① マグネシウム・カルシウム製剤(サプリ・医療用)
- ミネラル不足が疑われる場合に内服します。
- 下痢を起こしやすいので 1日摂取上限(Mg 350 mg) を守りましょう。
② 漢方薬(芍薬甘草湯〈しゃくやくかんぞうとう〉)
- 早く溶ける顆粒を 「つりそうな前」や「つった直後」に服用 すると効果的。
- 甘草成分を含むため、高血圧や肝機能障害のある方は医師に相談してください。
③ 筋弛緩薬(エペリゾンなど)
- 頻発する場合に医師が処方。眠気が出ることがあるので車の運転に注意。
④ キニーネ系薬(日本では未承認)
- 海外で難治性けいれんに用いられますが、心臓・血液の副作用が強く、日本では一般診療に使われません。
注意
どの薬も 「頻度が高く日常生活に支障がある」 場合の選択肢です。単発のこむら返りは、前述の 水分・ミネラル補給とストレッチ で十分改善するケースが多いので、自己判断での多剤併用は避け、まずかかりつけ医へご相談ください。
予防のためのセルフケア
水分とミネラル補給
- 水 200 mL + 塩分0.1~0.2 g をこまめに摂取
- スポーツドリンクなら 500 mLを運動30分前に半分、残りを運動中に
就寝前の“ながら”ストレッチ
ストレッチ | 方法 | 回数 |
---|---|---|
ふくらはぎ伸ばし | 壁に手をつき、片脚を後ろへ伸ばし踵を床に押し付ける | 20秒×左右3回 |
タオルストレッチ | 仰向けでタオルを足裏に掛け、膝を伸ばしたまま引く | 15秒×左右3回 |
ふくらはぎポンプ強化
エクササイズ | やり方 | 目安 |
---|---|---|
カーフレイズ | 椅子の背もたれを持ち、踵をゆっくり上げ下げ | 10回×2セット/日 |
アンクルポンプ | 仰向けで足首を “つま先手前→遠く” に交互に動かす | 30回×2セット/日 |
生活習慣のポイント
- 冷え対策:就寝時にレッグウォーマーや湯たんぽを利用
- 睡眠姿勢:布団が重く足首が伸びすぎないよう掛け布団を軽く
- 薬のチェック:利尿薬やスタチン系は医師に相談しながら調整
Q&A
Q.痛みが続いたら病院へ行くべき?
つりが 同じ足に毎晩起きる、もしくは 10分以上続く 場合は循環障害や神経障害の可能性があります。整形外科か内科を受診しましょう。
Q.寝ている間のこむら返りを防ぐサプリはありますか?
マグネシウムとビタミンDの不足がある人には効果が報告されています。ただし過剰摂取は下痢や腎機能に影響するため、食事で補い足りない分を推奨量内でとるのが安全です。
Q.妊娠中につるのはなぜ?
妊婦さんは 血液量が増え、胎児にカルシウムが取られる ためミネラル不足になりがちです。医師と相談のうえ鉄・カルシウム・マグネシウムの補給やレッグウォーマーでの保温が推奨されます。
まとめ
- こむら返りは 水分・ミネラル不足、筋疲労、冷え など複数の要因で起こります。
- つったら ストレッチ→温め→軽マッサージ が鉄則。
- 予防には 就寝前ストレッチとこまめな水分・ミネラル補給 が有効です。
- 頻発する場合は薬の副作用や血行障害が隠れていないか、医師へ相談してください。
参考文献
- Allen RE, et al. Muscle Cramp Syndromes: A Systematic Review of the Causes and Treatment. J Clin Neuromuscul Dis. 2020.
- Garrison SR, et al. Magnesium for skeletal muscle cramps. Cochrane Database Syst Rev. 2020.
- Abicht A, et al. Nocturnal Leg Cramps in the General Population: Risk Factors and Clinical Characteristics. Neurology. 2019.
整形外科専門医・医学博士 佐々木颯太